最低賃金引き上げの現実と中小企業への影響
最低賃金1,500円の実現性と課題
政府では、最低賃金を2020年代に全国平均1,500円に引き上げる目標を掲げています。金額が先行している印象を受けますが、実際に生活がどのように変わるのかについて期待値や実感が湧きません。また、目標として掲げており、実現しますとは言っていないため、実現の可能性があるのか疑問が残ります。
最低賃金だけで解決しない課題とは
期待値や実感が湧かないのは、1,500円となった場合に本当に生活しやすくなるのかと疑問に思うからであり、金額だけはなく、実際に生活が豊かになるかどうかが重要であると考えているからです。
例えば、全体的に価格が上昇した場合にはお金の価値は変わらず、生活の水準も変わらないのではと考えます。現在の物価が維持され、最低賃金が上昇すれ多少は豊かになることが期待できるかもしれません。しかし、物価が変わらないということは企業の売上が変わらない可能性が高く、その状況で賃金が上がるのであれば、企業の経営が行き詰まり、成り立たなくなる可能性が高いと想像できます。企業の労働生産性を高めることは重要と考えていますが、中小企業では労働生産性を高めていくことは容易ではありません。
中小企業の現状と最低賃金のリアルな影響
最低賃金や物価には、海外との価格価値の競争、つまり円安・円高の「適正なバランス」が大きく影響していると考えています。そのため、適正なバランスにするための最低賃金の目標であると理解していますが、特に中小企業には難しい設定であると感じます。
企業では、売上を伸ばしていくために値上げや新規商品・サービスで今までよりも価格設定を高くして販売し、消費者はその商品やサービスを購入する。一方で、消費者は賃金が上がらないと生活は苦しくなるため賃金アップを願い、企業は従業員の生活の維持のために賃金を上げる、このお金の循環のバランスが重要であり、海外との価格価値の問題はありますが、急激な賃金の上昇は混乱を生じさせる可能性があるように思えています。
特に、深刻な資金余剰の少ない中小企業が影響を受けないようにしていく対策が大切となります。
所得税・消費税などは、流通価格である物価が上がれば増えるでしょう。しかし、児童手当や助成金・補助金、103万円の壁、などの制度が現状のままであれはバランスが崩れてしまう恐れがあります。
元々バランスが崩れていたものを改善するのであれば良いですが、生活が改善していくことが感じられない、悪くなっていると感じる場合は崩れているということが言えるでしょう。
ただし、一律に中小企業を助けるのが最善であるとも限りません。中小企業自身も現状以上に生産性を向上して前進させていく必要があります。
豊かさを実感できる社会に向けて
所得に対して税や社会保障の比率や負担が下がらなければ生活は変わらりません。少なくとも商品価格に対する消費者の負担の比率が維持されるが大切であると考えます。
政府は、中小企業に一層の努力するよう求めているようにも思えてしまいますが、中小企業には大企業のような十分な資産があるわけではないため、事業展開しやすい制度が整備されることを望んでいます。